脳梗塞・脳出血や整形外科疾患の後遺症に対する新しいリハビリ方法である認知運動療法(認知神経リハビリテーション)の紹介。 麻痺や痛み・しびれの回復へ向けた日々の取り組みや基本的な考え方の紹介、相談コーナーもあります。

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「力の抜き方がわからない」 

多くの整形外科疾患や脳梗塞や脳内出血の患者さんから

このような声を聞いたことがあるのではないしょうか

今回、担当させていただいた肩関節周囲炎の患者さんからも同じ訴えがありました

10年前から続く痛みとのこと

リハビリに対しても不信感があるそうです

信頼を得るためにも、結果を出したいところです

果たして「力」は抜けるのか…


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今回、担当させていただいた外来で来られた肩関節周囲炎の患者さんの話です

10年前から右肩に痛みが出現したとのこと

はじめは病院で痛み止めの注射を打っていましたが、

数年後には効かなくなったそうです


そこで、リハビリに行くように言われたそうです


リハビリではどのようなことをされたのか伺うと…



患者さん「無理やり動かされてものすごく痛かった

     「力抜いてと言われたけどわからんねん

     「たまらんと思って1回でリハビリやめたわ



リハビリに対して不信感を抱いてらっしゃるようです

痛みがあるのにもかかわらず無理やり動かされたのですから当然かもしれません

患者さんからの信頼を得るためにも

訓練後には「リハビリに来てよかった」と感じていただきたいものです



まずは外部観察を行います

下部体幹の病理はほとんどありません

右肩甲骨は挙上・外転・前傾位、肘関節屈曲位です

肩から上肢全体が固まっているような印象です

触診すると肩甲骨周囲の筋緊張が亢進しており、

特に大胸筋、僧帽筋、上腕二頭筋の筋緊張が亢進しています

他動的に肩甲骨を動かしてみましたが、ほとんど動きません


カッチカチです


患者さんからは「腕全体が重だるい

         「肘を伸ばすと痛いから曲げている

         「力が入っているのはわかるけど、抜き方がわからない

という声が聞かれます


リハビリに対する不信感を抱いてらっしゃるようなので、

「信頼」を得るためにも痛みのないリハビリを行い、

患者さんが「良くなった」と自覚していただく必要があると思いました



患者さんの信頼を得るためにはどうすればよいのか



一番は、訓練前後で治療効果を出すことであると考えます




今回の患者さんにおいては、

「力が抜けた

「楽になった

「動きやすくなった

という自覚が得られることだと思います


現在は、「力を抜くコツ」を忘れたしまった状態でもあり、

訓練を通じて「力を抜くコツ」を学んでいただきたいものです



次に日常生活において、困っていることを聴取します

「信頼」を得るためには患者さんの困っていることを解決しなくてはなりません

話をうかがっていると「仕事で腕が使えない」ということが挙げられました

生活の中でどのような場面で痛みが生じるのか伺うと、

「夜中、寝ていると痛くて起きる」

と訴えられます

リラックスして寝ることができないと、動作時に痛みが生じるのは当然です

今回は、リラックスして寝るという点に注目しました



仰臥位(仰向けに寝る姿勢)をとっていただいて評価を行います

右肩甲骨は挙上・外転・前傾位、肘関節屈曲位

右肩甲骨が床から浮き上がっています

寝ているときの経験を伺うと、


患者さん「右の背中が床についていない

     「腕全体がしんどい
 
     「肘を伸ばすと痛い

と記述されます


このような状態を機能系(詳しくはコチラの視点から解釈します

病態解釈を行うときには、

生物学的構造-認知-経験の3つの要素の関係

を考えることが重要になります(詳しくはコチラ

身体を環境世界との情報交換を行う受容表面と考えると、

肩甲骨を含めた上部体幹の背面が床と接触する機能が変質していると考えました

その結果、肩甲骨周囲の筋緊張が亢進し、

「右の背中が床についていない」「腕全体がしんどい」といった、

意識経験につながっていると考えました


訓練を通じて「右の背中が床についている」と変化させることができれば、

肩甲骨周囲の筋緊張が制御されるのではないかと考えました


肩甲骨が浮き上がったままで訓練を行えないので、

肩甲骨と床の間にタオルを入れます


患者さん「少しついたわ だいぶ楽やわ」


と喜ばれます

自宅でも行うように指導を行いました



さぁ、いよいよ訓練です



上部体幹の背面が床と接触する機能を改善させるためには、

仰臥位で床と肩甲骨の間に硬度の異なるスポンジを入れて、

肩甲骨内転を伴いながら肩甲骨背面の触圧覚情報を認知させる課題

を行いたいところでした



しかし



肩甲骨が動きませんっ

カッチカチです

痛みも伴います



肩甲骨の動きを伴った課題は難易度が高いと考えました



そこで、特に筋緊張が亢進している大胸筋に対して、

硬度の異なるスポンジの差異を認識する課題を行いました

大胸筋が制御されて肩甲骨が動くなることを願います



右肩甲骨周囲に対しては、どのような刺激に対しても痛みが生じる不安感がありました

肩甲骨周囲を触ると痛みを伴った不快感が生じます

機能乖離からの解除を考えると強い刺激ではなく弱い刺激が良いと考え、

やわらかいスポンジ(1番、2番)を用いることにしました


まずは、同じ1番のスポンジを用いて健側(左側)と患側(右側)との比較を行います


セラピスト「悪い方に当ててみますね

      「どのような感じがしますか

患者さん「少し痛いですね触っているのか良くわかりません

セラピスト「それでは、良い方に同じものを当ててみますね

患者さん「こっちはよくわかりますすごくフワフワしています

     「悪いほうは全然わからないですね

セラピスト「だいぶ悪い方が鈍くなっているようですね


左右の感覚が異なることに驚かれていました

左右を比較することによって、問題提起にもなります


筋緊張の亢進といった特異的病理が出現しているということは、

中枢神経系にのぼる情報が変質していることを表しています(詳しくはコチラ


患側でも「痛み」ではなく「フワフワ」が感じられるようになれば、

大胸筋の筋緊張が制御されるのではないかと考えました

大胸筋の遠位部は特に痛みが強く、比較的近位部の方は痛みが少ないため、

まずは、近位部から行い、その学習経験を遠位部に活かしたいと考えました


大胸筋の近位部で硬度の異なるスポンジ(1番と2番)を識別する課題を実施します

硬度の差異を識別するときには、

知覚仮説が重要になります(詳しくはコチラ

つまり、硬度の差異を識別するときに、

どのような情報によって判断しているのか

を知ることが重要になります

知覚仮説を確認する方法として、2つの方法が挙げられています

訓練状況を変更すること

患者さんの言語記述で確認すること


です(詳細はコチラ

今回は、患者さんの言語記述を用いて確認しました


まずは患側で行い、患側でどのような知覚仮説を立てているのかを評価します

患側の大胸筋の遠位部で硬度の異なるスポンジ(1番と2番)を識別する課題を行います


セラピスト「1番と2番の違いがありますか

患者さん「よくわからないけど、2番の方が硬いね

セラピスト「1番と2番のどのようなところから違いがわかりましたか

患者さん「2番の方が痛みが響いてくるから


   硬度の差異に対して、痛みの程度を知覚仮説にしていることがわかりました

   このとき、セラピストは、

   「硬度の差異に対して、圧覚情報に注意を向けることができない結果、

   大胸筋の筋緊張亢進し、痛みとして認識しているのではないか

   と病態仮説 (詳しくはコチラ)を立てます

   同時に、「硬度の差異に対して、圧覚情報に注意を向けることができれば

   痛みは軽減し、大胸筋の筋緊張が制御されるのではないか

   という治療仮説(詳しくはコチラ)を立てます


   次は、圧覚情報に注意を向けることを学習するために、

   健側で課題を行い、

   健側の知覚仮説の立て方(圧覚情報に注意を向けること)を評価します


セラピスト「1番と2番の違いがありますか

患者さん「こっちは違いがよくわかるね フワッとしている 痛くない

セラピスト「1番と2番のどのようなところから違いがわかりましたか

患者さん「2番の方が弾力があるね


   身体外部の情報(詳しくはコチラ)に注意が向いています

   身体内部の情報(詳しくはコチラ)に注意に注意を向けるために、

   セラピストが少し援助を行います


セラピスト「物が変わったときに、当たっている胸の感じには何か変化はありますか

患者さん「2番の弾力がある方が、しっかり当たるね


   比較的容易に身体内部に注意を向けることが可能でした

   患側で「当たる感じ」という身体内部の情報に注意を向ける

   ように導きます


セラピスト「それでは、悪いほう(患側)でも当たる感じに違いがあるか確認してみましょう

セラピスト「1番と2番で当たる感じの違いがありますか

患者さん「フワッともしていないし、こっちは当たる感じも良くわからんね

  
   「当たる感じ」に注意を向けるだけでは不十分でした

   セラピストの立てた仮説が反証されてしまいました



   困りました

   大胸筋の筋緊張も制御されていません



   新たな仮説を立て直すことが求められます



   自分がスポンジの硬度の違いを認識するときにはどのような情報が必要か考えます



   そこで


  
   「スポンジが接触する瞬間がわかっていないとその後の

   圧覚情報に注意を向けても認識することができないのではないか

   と再度、病態解釈を行います


   そして


   「接触する瞬間がわかったうえで圧覚情報に注意を向けることができれば

   大胸筋の筋緊張が制御されるのではないか

   と治療仮説を立て直します


   接触する瞬間に注意が向くようにセラピストの援助の方法を変更します


セラピスト「スポンジが当たるときに声をかけるので、

      当たる感じがあるか気をつけてください

セラピスト「それでは触れますよ  せーの   はいっ

患者さん「あぁ、今のは少し2番のほうが強いのがわかりました

セラピスト「今の感じのときは痛みが出ますか

患者さん「これなら痛くないね  少しフワッとしているのもわかる


   接触する瞬間の圧覚情報に注意を向けることによって、

   痛みが軽減し、身体外部の情報を認知することも可能になりました

   少し大胸筋の筋緊張が制御されているのが観察されます

   立て直した仮説が検証されました

   グッときます


   次に、

   「大胸筋近位部での学習経験を痛みの強かった遠位部で活かすことができるのではないか

   と仮設を立てて患者さんを導きます


セラピスト「先ほど痛かった、肩の近く(大胸筋の遠位部)でも

      当たる感じに違いがあるか確認してみましょう

セラピスト「それでは触れますよ  せーの   はいっ

患者さん「当たる感じはなんとなくあるけど、ここはやっぱり痛いね


   ここでも仮説が反証されてしまいました

   

   頭を抱えます

   スポンジが身体に接触するときにどのような情報が生まれているのか

   再度、考えます



   そこで、「圧覚と時間の関係性が構築できず、スポンジが接触してからつぶれていく間の

   圧変化に注意が向いていないのではないか

   と仮説を立てました

   まずは、健側で確認します


セラピスト「こちら(健側)では、スポンジが当たってからつぶれていく時に、

      当たる感じは変化しますか

患者さん「グッとさらに強くなるね


   圧覚には時間的な変化があるようでした


   患側でも確認します

   圧覚と時間の関係性が構築できることによって、痛みが軽減することを願います


セラピスト「こちら(患側)でもスポンジが当たってからつぶれていく時に、

      当たる感じは変化するか確認してください

セラピスト「それでは触れますよ  せーの   はいっ

セラピスト「ここからもう少し強くなるか確認です  いきますよぉ

患者さん「あぁ~  グッと強くなるね


   圧覚と時間の関係性が構築できました

   はやる気持ちを抑えながら、痛みの程度について確認します


セラピスト「今は痛みはどうですか

患者さん「あれ  今は痛くないね

   

   大胸筋の筋緊張がかなり制御されているのが観察されます



最後に、カッチカチであった肩甲骨の動きを評価します


セラピスト「良い方のような、肩がやわらかく動く感じがあるか確認してください

   肩甲骨を外転・内転方向に他動的に動かします






   すると






あんなにカッチカチだった肩甲骨が動きます


患者さん「おぉ  ものすごい軟らかいなぁ  めっちゃ楽やわ

患者さん「今は力抜けてる  こんなん何年ぶりやろう

患者さん「これなら寝れそうやわ



バンザイです



患者さんも驚かれていました

なんとか結果を出すことができました



今後の方針について患者さんに確認します



セラピスト「このような感じでリハビリを行っていこうと思いますがいかがですか



患者さんが認知運動療法を受け入れていただけるかドキドキです





すると





患者さん「こんなんやったら痛くないし、続けられそうやわ



うれしいお言葉です


リハビリに対して不信感があった患者さんでしたが、

なんとか受け入れていただけました

患者さんから信頼していただけるように、

これからも結果を出していきたいと思います



リハビリの最後には自宅での注意点を指導させていただきました

仰向けに寝るときは肩甲骨と床の間にタオルを入れること

そのときに、タオルにもたれて胸に力が抜けた感じがあるか確認すること

です


今回は大胸筋に対する課題のみで終了となりました

今後の方針としては、

大胸筋で硬度の異なるスポンジを識別する課題において
 
 セラピストの援助を減らしていく

上部体幹の背面が床と接触する機能を改善させるために、

 仰臥位で肩甲骨内転を伴いながら肩甲骨背面の触圧覚情報を認知させる課題

を行いたいと考えています


患者さんが今晩寝るときに、少しでも痛みが減ることを願います



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コメント
この記事へのコメント
詳しくてよくわかりました
おはようございます。わたしも、とにかく、力をぬくというをいわれつづけてます。上肢も下肢も。

膝のまげ延ばしでも、脳に力任せに動けて命令するとものすごく揺れながら
伸びたり曲げたりできるんですが、他のところ、特に麻痺側の腕や指もにぎりこんでしまい。かちかちなってしまいます。
先生に強さでなく、方向性ていわれて、健康な方でやつたあと、アメリカンでスマートな脳からのりはビリをすると、スートうごきます。
私のような脳出血の麻痺は筋力もですが、とにかく、回路、脳と筋肉のコーディネイトができてないので、ほんのわずかな指令でも動きやすく
するために、体全体、特に麻痺してる側の力を抜くことが大切だと実感
してます。

ただ、先生方がことばで、力を抜いてくださいといわれて、脳で分析して実行することは、ほんとうに、難しいです。

これは旨く説明できません。たとえていうなら、だだっ子の心理みたいです。

いつも勉強させてもらいありがとうございます。

2009/02/16(月) 10:57 | URL | まるさん #XD/8Df/M[ 編集]
貴重なご意見ありがとうございます
>まるさんさんv-22

ご自身で体験されている貴重なご意見をありがとうございますv-352

力を抜くということは大変なのですねv-356

「だだっ子」という言葉の中に、

自分の言うことを聞かない様子が伺えますv-280

認知運動療法では、感じ方を学習することによって、

「力を抜くコツ」がわかることもありますv-21

まるさんさんの体験から、

「このように気をつけたら良かった」ということがございましたら、

ぜひとも教えていただければ幸いですv-22
2009/02/16(月) 22:27 | URL | 白いなまけもの #-[ 編集]
No title
はじめまして、
あんしん君のひとりごとから
リンクして来ました。

力を抜くって難しいですね。力を抜いたときの状態、それにともなう感覚を忘れてしまっているのですね。
イメージと結びつけるといいのでは、お風呂に入って、ふーっと
体が溶けるようなイメージとか、重力に引かれる感じとか、
接地面の感覚とかをイメージするといいのではないでしょうか?

じつは私、背損の当事者で障害があるのですが、OTを目指して
専門学校にいっていいました。
いろいろな事情で最終学年で退学してしまいましたが、
リハビリについては、当事者としても真剣に考えています。

ブログでおいおい、語っていきますので、よっていってリンクもコメントもお願いします。
2009/02/20(金) 00:17 | URL | あさ #-[ 編集]
コメントありがとうございます☆
>あささんv-22

はじめましてv-353

貴重な経験を教えていただきましてありがとうございますv-280

>イメージと結びつけるといいのでは、お風呂に入って、ふーっと
体が溶けるようなイメージとか、重力に引かれる感じとか、
接地面の感覚とかをイメージするといいのではないでしょうか?

認知運動療法では「イメージ」を治療のツールと考えておりますv-354

おっしゃるような感覚をイメージすることによって、効果があるといわれていますv-21

リハビリについて色々とお話できればうれしく思いますv-353

今後ともよろしくお願いいたしますv-22
2009/02/20(金) 01:10 | URL | 白いなまけもの #-[ 編集]
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