脳梗塞・脳出血や整形外科疾患の後遺症に対する新しいリハビリ方法である認知運動療法(認知神経リハビリテーション)の紹介。 麻痺や痛み・しびれの回復へ向けた日々の取り組みや基本的な考え方の紹介、相談コーナーもあります。

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認知運動療法では、「環境世界と関係を作り出すためには、

中枢神経系は情報を収集しなければならない」と言われています

このような「情報を収集する過程」、つまり、環境世界を「感じる」・情報を「知る」過程が

認知過程と言われています

今回は、先日の日記で紹介した脳梗塞に伴う左片麻痺の患者さんとの訓練の一場面です

注意に色々な問題を生じており、特に足部の認識が困難でした

今回、セラピストが注意を援助し認知過程を活性化することで、

足底部の圧覚の認識が可能になりました

その具体的な方法とは…


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環境世界と関係を作り出すためには、

認知過程を活性化することによって中枢神経系は情報を収集しなければならない

と言われています(認知運動療法講義P23)


認知過程の各項目は、個別に観察されるものではなく、それぞれの関係性が重要であり、

認知過程の各項目におけるどの項目に問題が生じたとしても、ひとつのシステムとしての「知る」「感じる」「学ぶ」ということが困難になります

※認知過程については10月4日の日記を参照してください

認知過程の問題を評価するためには、

システムとしての認知過程の中でどの部分に問題が生じているために、「知る」「感じる」「学ぶ」といったことが困難となっているか
を明らかにすることが重要となります

訓練では、システムとして問題が生じている部分に対してセラピストが援助を行うことで、

「認知過程を活性化」し、「知る」「感じる」「学ぶ」といったことを可能にするように導くことが求められます

プロフィールでは、認知過程における問題点はネガティブ因子として挙げられ、

その問題点に対してセラピストの援助によって認知過程における良い部分を用いることで

克服していくという視点で挙げられるのがポジティブ因子になります

ポジティブ因子を用いてネガティブ因子を克服するために導き出されるのが訓練になります



先日の日記(10月13日)で紹介した脳梗塞に伴う重度の左片麻痺患者さんとの訓練風景です

臀部の圧覚が認識できるようになると共に、関節運動に対する痛みは消失しました


しかし、まだまだ問題は山積みです…


特に認識できないのが、「足部の認識」です

足底で硬さが大きく異なるスポンジの差異を認識することができません


しかも、そのことに対してあまり問題を感じていません…

左片麻痺特有の症状ですね

また、プロフィールでは注意に多くの問題を抱えていました


体性感覚に注意が向きにくく視覚情報に注意が向きやすい

  → 関節運動に対して、「足が前に出ます」などの視覚的な記述が多い

一つの情報に持続的に注意を向けることが困難

  → スポンジから身体に加わる「圧力(強い-弱い)」を知覚仮説にしていても、途中で「物が軟らかい」といった他の知覚仮説を立ててしまう

複数の情報に同時に注意を向けることが困難

  → 一つ一つ聞かれると認識できるが同時に聞かれると認識することが困難


そこで、仮説を立てました


「認知過程をシステムと考えると、この症例の場合は注意に問題があるために足底の圧覚を認識することが困難になっているのではないか」
仮説を検証するために、プロフィールにおける注意の特徴を考えながら、

セラピストが注意に援助を行うことで足底の圧覚を認識することが可能になるのか検証です



図1から図2のように股関節の伸展を伴いながら踵をスポンジに接触させます(少し見にくいですね
踵スポンジ課題②
〔図1〕

踵スポンジ課題①
〔図2〕


硬さの異なるスポンジの2番と4番を比較します…


患者さん「同じです


スポンジの物理的な差を認識することができていません

やはり踵では圧覚を認知することができていません



どのように注意を活性化するか

いろいろ考えます



ここで症例の注意の特徴を考え、援助方法を考えます

体性感覚に注意が向きにくく視覚情報に注意が向きやすい
一つの情報に持続的に注意を向けることが困難


健側では同じ課題を行うと硬さの差を認識することは可能でした

しかし、知覚仮説を聞いてみると「硬さ」「高さ」「厚み」などバラバラです

一定の情報に注意を向けることができていません

また、知覚仮説を見てみると身体に対する記述がなく物体に対する意識が強いのがわかります

圧覚を適切に認識するためには、物理的な変化に伴う身体内の変化に注意を向けなければならないと考えます


そこで、身体の変化に注意を向けるようにセラピストは援助を行います

まずはセラピストの言語で身体外部から身体内部へと注意を向けていきます

セラピスト「硬さが違いますが、その時に踵にかかる感じは変化ありませんか

いきなり教えるのではなく、できるだけ患者さん自身に気づいていただけるように導きます


患者さん「やっぱり硬い感じやね


しかし、反応はひとつ…



そこで



視覚と手掌を使ってみます



手掌は足底よりも触圧覚の受容器が多く含まれているようです


開眼させて硬さの異なるスポンジに厚さの違いがないことを確認させ、

セラピスト「手のひらの感じに違いがあるか確認してくださいね

と指示して課題を行います




すると…




患者さん「硬いほうが強く当たるね。軟らかい方が弱いね


と身体の変化に気付いてくれました



そして、健側の踵で「強さ」という知覚仮説に集中して課題を実施した後に、

いざ患側へ







しかし







患者さん「同じやね





困りました





そこで、再度、注意の特徴を考えます

一つの情報に持続的に注意を向けることが困難
複数の情報に同時に注意を向けることが困難

よく考えると、踵でのスポンジを行うときには図1から図2のように股関節の伸展を伴っています
踵スポンジ課題②
〔図1〕

踵スポンジ課題①
〔図2〕



ということは…




スポンジの差異を認識しようと思った場合、

股関節の伸展運動の最中にスポンジと踵の接触に注意を向けなければなりません

つまり、
股関節伸展と踵の圧覚に同時に注意を向けなくてはならない
のです


この患者さんは複数の情報に同時に注意を向けることが困難なので、難易度が高過ぎると考えました



そこで



踵の圧覚のみに注意を向けるように設定を変更しました

図2の直前から開始し、動き出した瞬間に踵が接触する設定にしました
踵スポンジ課題①
〔図2〕

その際に、「一つの情報に持続的に注意を向けることが困難」という注意を時間的に調整できないことを考え、
動き出すタイミングと「強さ」に注意を向けることをセラピストが言語的に援助を行いました


図2の設定から、

セラピスト「私がせーのと言ったら踵がスポンジに当たるので、その時の強さを気をつけてくださいねいきますよぉ~ せ~のっ






とするとどうでしょう






患者さん「さっきより今の方が強いね





硬さの差が認識できました


しかも再現性もあります


この患者さんは下腿三頭筋の異常な伸張反射の亢進はありませんでしたが、

異常な亢進がある場合は、「感じる」ことができると同時に異常な伸張反射の制御を認めることが多く見られます


「認知過程をシステムと考えると、この症例の場合は注意に問題があるために足底の圧覚を認識することが困難になっているのではないか」という仮説が検証されました

とても嬉しい瞬間です


あとは、この援助方法で「圧覚の差異」を学習していただきました


これから徐々に援助の方法を減らしていくことで、患者さんがひとりで注意を向け、

圧覚の差異を認識できるように訓練を行っていきたいと思います



今回の訓練を通じて得られたプロフィール

【どのように認識するのか】
踵部で硬さの異なるスポンジ(②‐④)の識別が困難(ネガティブ因子)

手掌で「強さ」に注意を向け、健側の踵部で「強さ」を知覚仮説としたスポンジ課題を実施した後に患側で行う。股関節の運動があまり起こらない設定で、動き出すタイミングと「強さ」に注意を向けることをセラピストが言語的に援助すれば患側踵部で硬さの異なるスポンジ(②‐④)の識別が可能となる(ポジティブ因子)

【どのように注意を使うのか】
体性感覚に注意が向きにくく視覚情報に注意が向きやすい (ネガティブ因子)
→ 
手掌などで視覚とセラピストの言語による援助を用いることで体性感覚情報に注意を向けることが可能となる。
その後であれば、踵部でも体性感覚情報に注意を向けることが可能(ポジティブ因子)

一つの情報に持続的に注意を向けることが困難(ネガティブ因子)

セラピストの言語による援助によって一つの情報に持続的に注意を向けることがある程度可能(ポジティブ因子)

複数の情報に同時に注意を向けることが困難(ネガティブ因子)

一つの情報であれば注意を向けることが可能(ポジティブ因子)





認知運動療法では、訓練を構築するために病態観察のプロフィールを作ることが求められます

ポジティブ因子を用いてネガティブ因子を克服するために導き出されるのが訓練になります

ポジティブ因子とネガティブ因子は毎日の訓練を通じた仮説-検証作業を通じて抽出されます

そのために認知運動療法では、評価と訓練は一体であるといわれています

「感じられない患者さんが、このように援助したら感じるようになった

その積み重ねがポジティブ因子とネガティブ因子につながります

そのため、訓練においてセラピストが援助を行うときには、

「システムとしての認知過程の中でどの部分に援助を行っているか」を意識することが重要になると考えます

その援助によって認知過程が活性化し、患者さんが「感じる」ことができたならば、

その患者さんにはシステムとしての認知過程の中で援助した部分の問題が生じていることを現しています


毎日の仮説―検証作業によって、「訓練」は構築されます

同時にセラピストの臨床思考も洗練されていきます

そのため、訓練(エクササイズ)は、2つの意味において認知運動療法の要となると言われています認知運動療法へ・私の臨床ノート〈2〉臨床思考の手続きと治療P17~)

ひとつは、それが患者にとって機能回復を生み出すための自分自身の経験となること、

そしてもうひとつは、それが臨床家にとって患者の抱える病態の理解から訓練の実際にまで至る臨床思考の内容の妥当性を検証し、

さらに洗練されたものにしていくための“唯一の”方法であることと言われています



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脳のリハビリである認知運動療法を

     臨床展開するための考え方についてはコチラ

    (最初の記事から順に読んでいただくとよいと思います





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コメント
この記事へのコメント
No title
いつも素晴らしい臨床を展開され、尊敬するばかりです。
今日も、じっくり拝見させていただきました。

“それが臨床家にとって患者の抱える病態の理解から訓練の実際にまで至る臨床思考の内容の妥当性を検証し、

さらに洗練されたものにしていくための“唯一の”方法であることと言われています”

まさにここにthの専門性があるのではないでしょうか。

明日も、患者様の内なる声を聴けるように努力します。
2008/10/15(水) 23:25 | URL | むら #-[ 編集]
コメントありがとうございます☆
臨床ではうまくいかなずに苦労することもたくさんありますv-393

適切に認知過程を活性化できたときは、患者さんと喜びを分かち合えるので嬉しいですねv-353

専門性を高めていって、少しでも患者さんの力になりたいですねv-22

私も明日も頑張りますv-91
2008/10/16(木) 00:37 | URL | 白いなまけもの #-[ 編集]
No title
また見させていただきました!
応援ポチッ!!!
2008/10/19(日) 16:02 | URL | サトシ #-[ 編集]
はじめまして
はじめまして。本日はじめて拝見させていただきました。
自分が治療場面にいるような気分になりました。
ここまでしっかりと考えられていること・・・非常にすばらしいと思います。
多忙な日々の中でついつい色々な検証作業を省略してしまいがちですが、ここまでつめていくとしている方も楽しいですよね。私も、患者さんとお互い変化に気づいていくことを仕事の楽しみとしているのでまた明日からさぼってた部分の検証作業再開します。
また勉強にきます!!
2008/10/19(日) 19:40 | URL | ぽにょ♂ #-[ 編集]
応援ありがとうございます!
>サトシさん☆

いつも応援ありがとうございます(*^O^*)

とても励みになります(o^v^o)

今はパソコンが修理中なのですが直り次第、アップしたいと思います!!
2008/10/21(火) 05:44 | URL | 白いなまけもの #-[ 編集]
コメントありがとうございます☆
>ぽにょさん☆

はじめまして(^v^)

コメントありがとうございます(*^O^*)

日記を読んでいただいたうえな、そのように感じていただけるなんて、とても励みになります☆

臨床は仮説―検証作業の繰り返しですね(^_^)

よろしければ、ぽにょさんの臨床のお話もお聞かせいただければ幸いです☆

今日も1日仮説―検証作業を頑張ります!!
2008/10/21(火) 05:53 | URL | 白いなまけもの #-[ 編集]
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